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介護保険法とは?2021年度法改正のポイントと基本情報を解説

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2022.11.25

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「2021年に介護保険法が改正されたと聞いたけど内容がわからない」などと考えていませんか。定期的に改正されるため、ついていけないと感じている方もいるでしょう。気持ちは理解できますが、古い知識のままでいることはおすすめできません。自己負担額や利用できる施設などに変更が加わることもあるからです。この記事では、介護保険の概要と2021年の変更点を解説しています。全体の流れを押さえておきたい方は確認しておきましょう。

         

介護保険法とは

家庭内で行ってきた介護を社会全体で行うため、1997年に創設された仕組み(2000年施行)です。いわゆる介護地獄などが社会問題になったため創設されました。主な特徴として次の点があげられます。

【特徴】

  • ・自立支援
  • ・利用者本位
  • ・社会保険方式

自立支援は、介護を必要とする状態になっても利用者が介護サービスを活用しながらその人らしく暮らせるように支援することを意味します。単に身の回りの世話をするために設けられた制度ではありません。

利用者本位は、利用者が自らの選択によりさまざまなサービスを利用できることを意味します。行政が利用できるサービスを一方的に決定するわけではありません。

社会保険方式は、加入者の保険料を主な財源とすることです。負担と給付の関係が明確になるため、福祉としてではなくサービスとして利用しやすくなります。財政の問題を解決するだけでなく、自立支援・利用者本位を実現する重要なポイントになっています。

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法改正が都度行われる

介護保険法は3年に1度のペースで法改正が行われます。高齢化社会の進展とともに変化する社会問題や利用者のニーズに対応するためです。社会の変化にあわせて、定期的に見直しが行われる制度といってよいでしょう。過去には、平成17年(2005年)、平成20年(2008年)、平成23年(2011年)、平成26年(2014年)、平成29年(2017年)、令和年(2020年)に大きな法改正が行われています。

例えば、平成17年(2005年)の改正では、軽度者の大幅な増加などをうけて新予防給付が創設されました。独居高齢者、認知症高齢者の増加などに対応するため、地域密着型サービス、地域包括支援センターが創設された点も見逃せません。[1]あるいは、平成29年(2017年)の改正では、介護保険の持続可能性の確保が大きな焦点となりました。この点を実現するため、2割負担者のうち特に所得が高い方の自己負担割合が3割へと引き上げられています。また、介護総納付金に総報酬割が導入された点もポイントです。[2]

介護保険法では、このような改正が定期的に行われています。制度の在り方は常に変わっているため、最新の情報を把握しておくことが欠かせません。

老人福祉法と老人医療法の違い

介護保険法と混同されやすい制度として、1963年7月に施行された老人福祉法があげられます。同法の目的は、高齢者福祉の原理を明らかにして、健康保持・生活安定のための措置を講じ老人福祉を実現することです。[3]

「措置」を講じとなっている点が、介護保険法との大きな違いといえるでしょう。ここでいう措置は、自治体が行政の責任により実施する行政処分です。したがって、老人福祉法に基づく措置では、自治体が決定した施設へ入所することになります(公費負担)。対する介護保険法は、措置制度ではなく保険給付を採用しています。保険料を納付している利用者が、保険給付を受ける権利を有している点がポイントです。したがって、自らが選択した介護保険サービスを保険給付として利用できます。

介護保険制度がスタートしてから、高齢者福祉サービスの利用は介護保険法が優先されることになりました。ただし、家族の虐待などやむを得ない事由で介護保険サービスを受けられない場合などでは、現在でも老人福祉法に基づく措置が行われます。

併せて押さえておきたいのが、後期高齢者医療制度との違いです。同制度は、平成18年に老人保健法が高齢者の医療の確保に関する法律へと改正され実施しました。両者の違いを端的に説明すると、後期高齢者医療制度は医療サービス、介護保険法は介護サービスを対象とすることです。

          

【2021年度】介護保険法改正のポイント解説

2020年に成立した介護保険法改正は、2021年4月から施行されました。主な改正点は次の通りです。

  1. 地域住民のニーズに対応する支援体制の構築
  2. 地域の特性に応じた介護サービス提供体制などの整備
  3. 介護人材確保・業務効率化の取り組み
  4. 高額介護サービス費の見直し

「1」のポイントは、既存の支援体制では対応が困難なニーズに応えるため、新たに社会福祉法に基づく「相談支援」「参加支援」「地域づくり」に向けた事業を創設することです。これらにより、世代や属性を問わず相談できる環境を構築します。

「2」のポイントは、今後予想される介護サービスの需要増加、多様化などに対応するため、地域の特性に応じた介護サービス提供体制を整備することです。具体的には、認知症施策の総合的な推進、地域支援事業におけるデータ活用、介護サービス提供体制の整備を掲げています。例えば、介護サービス提供体制の整備では、介護保険事業計画の作成にあたり人口醸造の変化の見通しを勘案することが掲げられています。

「3」のポイントは、介護業界における人材不足と2025年以降に想定される現役世代の減少を見据えて、介護人材の確保と介護業務の効率化に関する取り組みを強化することです。具体的には、事業者の負担を軽減するため有料老人ホーム設置などに関する届け出事項の簡素化などを計画しています。また、人材不足に対応するため、介護福祉士養成施設卒業者に対する国家試験義務付けの経過措置を令和8年卒業者(改正前は令和3年卒業者)まで延長することになっています。

「4」のポイントは、利用者の負担限度額が変更になったことです(令和3年8月から)。高額介護サービス費は、1カ月の利用者負担合計が一定の基準を超えたときに超過分が払い戻される制度を指します。改正により2つの上位区分が設けられました。[4]

区分 負担限度額/月(世帯)
課税所得690万円以上(改正で新設) 140,100円
課税所得380万円〜690万円未満(改正で新設) 93,000円
市町村民税課税〜課税所得380万円未満 44,400円
世帯全員が市町村民税非課税 24,600円
世帯全員が市町村民税非課税で「前年の公的年金+その他所得の合計が80万円以下」 24,600円
15,000円(個人)
生活保護受給者 15,000円

※課税所得690万円は年収で約1,160万円
※課税所得380万円〜690万円は年収で約770万円〜1,160万円

改正により高所得者の自己負担限度額は大きくなっています。

                   

介護保険制度の概要

ここからは、介護保険制度の対象者と目的を解説します。

対象者

対象者は、第1号被保険者と第2号被保険者です。第1号被保険者は65歳以上の方、第2号被保険者は40歳から64歳までで医療保険に加入している方を指します。ただし、両者の受給要件は同じではありません。

第1号被保険者は、要介護状態または要支援状態と認定された場合にサービスを利用できます。第2号被保険者がサービスを利用できるのは、要介護状態または要支援状態が特定疾病に起因する場合だけです。特定疾病は、病的な加齢現象との医学的関係があると考えられる病気で、一定の要件を満たし要介護状態の原因となる障害を引き起こしていると認められる病気といえるでしょう。具体的には、以下の16疾病を指します。[5]

【特定疾病】

  1. がん(医師が回復の見込みがないものと判断したもの)
  2. 関節リウマチ
  3. 筋萎縮性側索硬化症
  4. 後縦靭帯骨化症
  5. 骨折を伴う骨粗しょう症
  6. 初老期の認知症
  7. パーキンソン病関連疾患
  8. 脊髄小脳変性症
  9. 脊柱管狭窄症
  10. 早老症
  11. 多系統萎縮症
  12. 糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症・糖尿病性網膜症
  13. 脳血管疾患
  14. 閉塞性動脈硬化症
  15. 慢性閉塞性肺疾患
  16. 変形性関節症(両側の膝関節・股関節)

以上の通り、同じ被保険者でも第1号被保険者と第2号被保険者では受給要件が大きく異なります。

目的

高齢化の進展による要介護者の増加・介護期間の長期化、核家族化をはじめとする家族の在り方の変化をうけて、従来の老人福祉制度・老人医療制度だけでは介護ニーズに対応できなくなったため介護保険法は創設されました。目的は、介護保険第1条で次のように定められています。

この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。

出典:e-gov法令検索「平成九年法律第百二十三号介護保険法」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=409AC0000000123

簡単にまとめると、加齢による疾病などで介護が必要な状態になっても、その人らしく自立した生活を送れるように保険給付を行うため介護保険制度を設け、これにより国民の福祉ならび保健医療の向上を図るといえるでしょう。

          

介護保険の料金と支払い方

第1号被保険者で公的年金を年間18万円以上受給している方は、特別徴収により介護保険料を納めます。特別徴収は、年金支払機関が保険料を天引きする支払方法です。例えば、保険料が1万円、年金の支給額が12万円であれば、実際に振り込まれる年金は11万円になります(金額は参考)。第1号被保険者で年金の受給額が年間18万円未満の方などは、普通徴収により介護保険料を納めます。普通徴収は、納付通知書を使って銀行やコンビニエンスストアなどで保険料を納付する方法です。

第2号被保険者は、健康保険・国民健康保険(公的医療保険)などの保険料とあわせて介護保険料を支払います。介護保険料を徴収されるのは、被保険者である40歳〜64歳の方です。つまり、40歳未満であれば介護保険料は徴収されません。

ちなみに、自己負担割合も第1号被保険者と第2号被保険者で異なることがあります。前者の負担割合は負担能力に応じて1〜3割負担、後者の負担割合は1割です。いずれの場合も、自己負担額はサービス提供主体に支払います。

          

介護保険法で定められている介護サービスの種類

要支援・要介護認定を受けた方は、介護保険法に基づき次の介護サービスを受けられます。

種類@支援サービス(要支援1〜2)

要支援1・2を受けたときに利用できるサービスです。具体的には、訪問サービス、通所サービス、短期入所サービスなどで構成される在宅サービスを利用できます。訪問サービスの例として介護予防訪問介護、介護予防訪問看護など、通所サービスの例として介護予防通所介護、短期入所サービスの例として介護予防短期入所生活介護があげられます。要支援認定の場合、施設サービスは利用できません。

種類A地域密着型サービス

中度から重度の要介護高齢者や認知症の高齢者が住み慣れた地域で暮らしていけるように、市町村が主体となり各事業者が提供するサービスです。要支援認定を受けた方を対象とするサービスと要介護認定を受けた方を対象とするサービスがあります。代表的なサービスとして、小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護・認知症対応型共同生活介護などがあげられます。例えば、認知症対応型共同生活介護は、認知症の要介護者がグループホームに入所して馴染みの関係のもと支援を受けながら自立した生活を送るサービスです。これらのほかにも、さまざまなサービスが提供されています。

種類B介護保険施設サービス

介護保険施設に入所した要介護者に対し提供されるサービスです。介護保険施設には次の4種類があります(2022年時点)。

【種類】

  • ・介護老人福祉施設
  • ・介護老人保健施設
  • ・介護医療院
  • ・介護療養型医療施設

介護老人福祉施設は特別養護老人ホームと呼ばれることもあります。原則要介護3以上の方が対象です。入所者は、日常生活の世話や機能訓練などを受けられます。位置づけは、要介護高齢者の「生活の場」です。

介護老人保健施設は、要介護高齢者が自宅で生活を送るため医学的管理のもと機能訓練や介護などを提供する施設です。もちろん、日常生活の世話も受けられますが、基本的にはリハビリに取り組む施設といえるでしょう。「生活の場」ではないため、長期間にわたる入所は基本的にできません。

介護医療院は、2018年に新たに創設された介護保険施設です。医療を必要とする要介護高齢者を対象とします。施設の位置づけは、要介護高齢者の「長期療養・生活の場」です。介護医療院は、要介護度が高い方を対象とする1型、在宅復帰を目指しリハビリなどを行う2型などにわかれます。

介護療養型医療施設は、医療を必要とする要介護高齢者が長期療養を行う施設です。2023年に廃止されて、介護医療院に移行することになっています。

種類C居宅サービス

自宅で暮らしながら利用できるサービスです。具体的には、以下の種類があります。

通所サービス

自宅から施設へ通い利用するサービスです。通所介護・通所リハビリテーションにわかれます。前者はデイサービスセンターなどで受けられる日常生活の世話、機能訓練など、後者は介護老人保健施設などで受けられるリハビリテーションなどを指します。

短期入所サービス

施設へ短期間入所するサービスです。介護老人福祉施設などへ入所して生活の世話などを受ける短期入所生活介護、介護老人保健施設などへ入所して機能訓練などを受ける短期入所療養介護があります。

訪問サービス

居宅で受けられるさまざまなサービスを指します。具体的には、介護士などが日常生活で必要になるサービスを提供する訪問介護、看護師などが療養に関する世話などを行う訪問看護、作業療法士や言語聴覚士などがリハビリテーションを行う訪問リハビリテーションなどがあります。

          

介護保険の改定内容を押さえておきましょう

いかがでしたでしょうか。介護保険の改定について解説しました。2021年(2020年)の改正では、高額介護サービス費に新たな上位区分が加えられるなどの改正が行われています。3年に1回のペースで大規模な改正が行われるため、最新の情報を押さえておくことが重要です。

[1]出典:厚生労働省「2005年度介護保険法改正」
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/gaiyo/
k2005_02.html

[2] 出典:厚生労働省「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律のポイン」
https://www.mhlw.go.jp/content/
000640410.pdf

[3]出典:e-GOV法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338AC0000000133

[4]出典:厚生労働省「令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」
https://www.mhlw.go.jp/content/
000334526.pdf

[5]出典:厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/
gaiyo3.html